先回、初めてビタミン剤を購入した患者様。今回の診察で肝機能障害の兆候あり。
医師からビタミン剤を服用したことによって、肝機能低下が生じたのではないかと指摘があった。
実際に混合ビタミン剤によって肝障害は起こるのか?
内閣府食品安全委員会に当該ビタミン剤に含まれる各成分について資料がありましたので、引用します。
チアミン
チアミンを、ヒトが高濃度摂取しても腸の不調以外の有害作用は認められない。 大量(100~500 mg/ヒト)のチアミンを血液中に投与しても一般的には耐性がある。 チアミンはハプテンとして作用し、非経口的投与により、過敏反応を起こすことがある。10 mg/ヒトの 1 回静脈内注射静注により過敏症患者が死亡したという報告がある。 チアミン塩酸塩は治療薬として長年にわたり使用されてきた。(参照 4 栄養研)
ピリドキシン
【 ヒトにおける神経毒性以外の知見】 ピリドキシンの摂取による副作用として、光線過敏症が報告されている。ピリドキシン 200 mg を含む総合ビタミン剤を投与された 35 歳の患者は、紫外線に暴露された後、紅斑が発現し、総合ビタミン剤中のピリドキシンに起因すると考えられた。4 年間大量(4,000 mg/ヒト/日)投与された女性で、皮膚の病変が報告された。薬理学的投与量(35 mg/ヒト/日)のビタミン B6 を投与されたダウン症候群の患者400 名に認められた副作用には、日光に暴露されたことに関連した皮膚疱疹、嘔吐及び末梢神経障害が含まれており、水泡を発現した患者は全て最低 4 年半の投与期間経過後であった。50 mg/kg 体重/日までの用量を 9 年間投与後に、運動性及び感覚性の多発性ニューロパチーを発症した 2 名の患者は、ビタミン B6 の投与をいったん中止すると体調は回復した。(参照 7:「SCF」p7)
リボフラビン
偏頭痛患者 49 人に、リボフラビンを食事時に少なくとも 3 ヶ月間投与(400 mg/ヒト/日)したが、リボフラビン投与に起因する有害影響はみられなかった。別の試験で、偏頭痛患者 55 人に、リボフラビンを 3 ヶ月間投与(400 mg/ヒト/日及び偽薬の無作為試験)した。リボフラビン投与群の 2 例に軽度の有害影響として下痢及び多尿症が、偽薬群の 1 例に腹痛腹部痙攣が観察された。(参照 78:SCF p5)
ニコチン酸アミド(ナイアシン)
ニコチン酸及びニコチン酸アミドの大量投与摂取によるヒトへの影響は、低コレステロール血症、脂質異常症、糖尿病等の予防又は治療に用いられた結果、数多く報告されており、血管拡張作用、消化管への影響、肝臓毒性及び耐糖能異常といった主要な有害影響のほか、血小板減少症、血漿中ホモシステイン濃度の増加、類嚢胞黄斑浮腫等が報告されている。(参照 8:「SCF」
以上のことから、ビタミンB群において肝機能障害が問題となるのはニコチン酸アミドですが、高用量(1g/日以上)を摂取させたときに多く発現します。
③ 肝臓毒性(参照 8、13)ニコチン酸の高用量の投与における最も重篤な有害影響は肝臓毒性である。肝臓への影響は 1 g/ヒト/日以上のニコチン酸を摂取したヒトに時々発現する。肝臓毒性は、肝細胞損傷により肝臓由来の血清トランスアミナーゼが増加することにより検出されるが、トランスアミナーゼの血清中濃度のわずかな増加は肝臓の重篤な損傷を示唆するものではなく、ニコチン酸の摂取を中断すれば正常に戻る。より重篤な反応では、黄疸、倦怠感が生じ、劇症肝不全の報告もある。(参照 13:「CRN」safety evidence)
当該ビタミン剤のニコチン酸アミドの含量が20mg/包であり、一日摂取量が60mg/日であることから、当該ビタミン剤による影響とは考えにくいといえます。
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