2017年11月8日

薬剤師の情報提供の範囲

【質問内容】
先日患者より、「向精神薬の先発とGEの対比の一覧のようなものが欲しい」と問い合わせがありました。
薬局に精神神経用剤一覧が余っており、記載内容も添付文書以上のことは記されていませんでした。
以前添付文書を印刷して患者にお渡ししたこともあるため、今回もお渡しという形で対応致しました。
そこで疑問に浮かんだことがあり、この度ご相談させて頂きました。

患者から医薬品についての文書(今回のように精神神経用剤一覧やツムラの漢方一覧など)の提供を求められた際に、薬局から渡すことは可能なのか。また渡してはいけない文書の類はあるのか教えていただけますでしょうか?

【回答内容】
結論から申し上げると、治療の妨げにならなければ提供してはいけない情報というものはありません。

まず薬機法で薬剤師の情報提供が義務付けられている点について解説します。

薬機法施行規則より
(2)         当該薬剤の用法、用量、使用上の注意、当該薬剤との併用を避けるべき医薬品その他の当該薬剤の適正な使用のために必要な情報を、当該薬剤を購入し、又は譲り受けようとする者の状況に応じて個別に提供させ、及び必要な指導を行わせること。
(3)     当該薬剤の副作用その他の事由によるものと疑われる症状が発生した場合の対応について説明させること。
(4)     情報の提供及び指導を受けた者が当該情報の提供及び指導の内容を理解したこと並びに質問の有無について確認させること[1]

薬剤師法より
薬剤師は、調剤した薬剤の適正な使用のため、販売又は授与の目的で調剤したときは、患者又は現にその看護に当たつている者に対し、必要な情報を提供し、及び必要な薬学的知見に基づく指導を行わなければならない。[2]

以上が薬剤師がどのような内容を提供しなければならないか、また情報提供・指導を義務付けている法的根拠となります。

その上で、提供してはいけない情報については、特に明言されているものはありません。というのは、施行規則にある通り、適正使用に必要な情報を(中略)患者個々の状況に応じて個別に提供となっているからです。

薬剤師がその患者さんに必要な情報であると判断すれば、今回の資料についても提供しても良いと言えるでしょう。

他方、メーカーが医療関係者向けに作成した資料はあくまで、医療関係者向けの資料となります。医療関係者であれば正しく判断できる内容の情報であっても、一般の方がそうであるとは限りません。

例えば、添付文書のように『警告』『禁忌』と強い単語が入った資料を見たときに患者さんがその薬剤の使用を中断してしまったとします。仮にそれによって体調不良を起こしてしまったとすれば、生じた責任は薬剤師が問われる可能性もあるわけです。

ですので、提供した情報が治療計画の妨げにならないようにする注意は必要となってきます。
医療関係者向けの情報である旨、しっかりと説明をすることや、必要以上の資料提供は避けることも大事かもしれません。




[1]薬機法施行規則調剤第15条の13.された薬剤に係る情報提供及び指導の方法等.

[2]薬剤師法.25条の2.情報の提供及び指導


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