2017年2月9日

心室中隔欠損の既往患者への歯科治療

歯科からの処方箋。

Rp)アモキシシリン250mg 3C

3*毎食後 4日分

※術前1時間前に3カプセル服用すること。


患者は心室中隔欠損の既往があり、未だに微小孔がある状態とのこと。

このような特殊な服用方法は有効なのか?


先天性心疾患である心室中隔欠損の場合、抜歯などの処置により感染性の心内膜炎のリスクを考えなければなりません。

感染性心内膜炎は弁膜や心内膜,大血管内膜に細菌集 蔟を含む疣腫(vegetation)を形成し,菌血症, 血管塞栓,心障害など多彩な臨床症状を呈する全身性敗 血症性疾患である[1]

感染性心内膜炎の予防と治療に関するガイドラインに以下の記載があります。
ClassⅠ 感染性心内膜炎の予防として抗菌薬投与をしなくてはなら ないもの 歯口科 出血を伴ったり,根尖を超えるような大きな侵 襲を伴う歯科手技(抜歯,歯周手術,スケーリ ング,インプラントの植え込み,歯根管に対す るピンなどの植え込みなど) 心臓手術 人工弁,人工物を植え込むような開心手術 耳鼻科  扁桃摘出術・アデノイド摘出術
その上で投与量については以下の記述もありました。

この投与法により,投与後1 時間から6 時間まで薬剤の血中濃度が,感染性心内膜炎を引き起こすほとんどの口腔内連鎖球菌の最小発育阻止濃度の数倍以上に維持されることを示した.処置が6 時間以内に終了すれば,追加投

与の必要はない.2.0 g という投与量が,わが国では高用量過ぎて受け入れられないという懸念が,ガイドライン委員会でも議論された.この研究の対象の平均体重は70 kg であり,血中濃度が体重と大きく関連していた事実もあるので,わが国においては必ずしも2.0 g が必要量ではないかも知れない.成人では,体重あたり30mgkg でも十分ではないかということも言われているので,体重の少ない女性では,1.01.5 g という投与量の選択も十分に理解できるところである

以上のことより、術前1時間前に3カプセル服用させるというのは先天性心疾患患者の感染性心内膜炎予防にとって非常に重要な服用方法と言えます。


[1]感染性心内膜炎の予防と治療に関するガイド ライン(2008年改訂版)


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