2017年1月31日

胃全摘例へのPPIの投与

逆流性食道炎による喉の炎症でラベプラゾール10mを普段処方しております。今回、胃全摘の方にラベプラが処方されました。Drには伝えたそうですが飲んでも問題ないとのことで処方されたそうです。薬効機序から考えると効果がないように考えられるのですが他の目的もあるのでしょうか。

まず、胃全摘後の逆流性食道炎の発生機序についてです。これは手術により下部食道括約筋の逆流防止機構が破壊されることによる十二指腸液の逆流が一因と考えられます。



十二指腸液の主成分は胆汁、膵液であり、胆汁は特に逆流性食道炎の原因であると考えられています。


胆汁が逆流することで炎症性伝達物質のCOX2PGE2が誘導され、結果として食道炎に繋がるわけです。


病態から考えると、臨床的にはフオイパンが第一選択となります。


さて、お問い合わせの件ですが、胃を全摘したラットにおける動物実験の結果より、PPIを投与することで対照群に比べて有意な抑制効果が認められたとのことです。作用機序ははっきりとなっていませんが、PPI投与により胆汁酸が抑制され、下部食道組織中の炎症の指標であるCOX2PGE2が低下することに起因すると推測されています[1]

また、実際の胃全摘後の逆流性食道炎患者にラベプラゾールを投与した例も数例報告されており、どの症例にも改善が認められたとの報告があります。これによりラベプラゾールに食道上皮の再生を促す効果や蠕動運動を亢進する効果があると推測されています[2]


[1]橋本直樹(2013) 胃全摘術後逆流性食道炎ラットモデルにおけるPPIの効果 消化器内科,562):172-176

[2]目黒英二(2002) 幽門側胃切除後逆流性食道炎に対するProton Pump Inhibitor,Rabeprazolの臨床的有用性 新薬と臨床,515416-425





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